海藻パワー!環境保護、代替タンパク質、新素材、新食材として注目されている「海藻」のポテンシャルとは?:オランダ農業大学生インターン記事①

こんにちは。オランダの農業大学で学んでいる、ライターインターン生の森田です。

わかめ、海苔、ひじき、昆布、もずく...

皆さんはどの海藻が一番好きですか?

日本人にはとても身近な海藻ですが、オランダでは最近注目され始めたよそ者です。

大学最初のグループプロジェクトで「農作物のサプライチェーンを調べる」という課題が出ました。

他のグループが、バナナや米と、一般的なものを選ぶ中、私のグループは、何か面白いものを選ぼうと「海藻」に決めました。

私自身はよく食べる海藻ですが、サプライチェーンという視点から見てみて新たな魅力を見つけたので、今回はその秘められた力を紹介したいと思います!

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さくっと概要を知りたい方はこちらへ

【海藻の生産】環境にもヒトにも優しい

作物を育てるとなると、肥料・農薬、水資源、土地などの使用が問題となりますが、海藻の場合はどれも要りません。

何しろ、海藻の育つ海では、常に水があり、栄養素も入れ替わり流れてきます。さらに、河口などの栄養分が過剰に流れる場所では、浄化の役割も果たします[1]。

栽培地の設置場所や形態にもよりますが、海には未使用の場が溢れていますし[2]、

海底ではなく網・紐などを使って栽培地を作れば、「森林伐採」のようにサンゴ礁などの生態系を破壊する心配もありません

海藻のお陰で生物多様性も向上する

ニモがサンゴ礁に住んでいるように、海藻の「森」にも沢山の魚が住んでいます[3]。

また、養殖業の盛んな地域では、水の富栄養化が問題となりますが[4][5]、

その解決策として今、IMTA(Integrated Multi-Trophic Aquaculture、統合型マルチ栄養段階養殖業)という、魚と海藻、そして貝類などを同じ場所で育てる方法が注目されています[6]。

魚が排出する二酸化炭素と糞を、海藻が光合成や成長に使う、共生・循環型モデルです。

海藻栽培は地域の大切な収入源となる

特に、ダイナマイトを使った違法な漁業や、乱獲に頼る発展途上国では、環境に優しく、ヒトにとっても安全な職として、地域や政府から注目されています[7]。

例えばタンザニアのある村では、違法な漁業に代わる産業、そして女性も主体的に参加できる職業として海藻産業が発展してきています[8][9]。

こんなに嬉しいことがある食べ物なら、もっと買って食べて応援したくなりますね!

【海藻の消費】食用は一部の地域で、産業用は世界で

世界で消費される海藻の83%は、直接か非直接的にヒトによって消費されています[10]。

日本人にお馴染みなのは、海苔やワカメなど、そのまま食べることでしょうが、寒天やアルギン酸など、加工されて私たちの体に入るものも多々あります。

海藻をそのまま食べるのは、消費量のほんの一部でしかありません。

アイルランドでは、ダルスという、赤色の海藻がよく食べられているそうです。

地域によっては海藻に全く馴染みがなく、最近インド人の友達に巻き寿司を披露したところ「何この黒い紙は?」と不思議がられました。

ワカメ、ダルスも手元にあったので、「これは全部海藻の一種だよ」と教えると、「へえ~、見たことないや」と言われました。お気に入りはダルスだそうです。

(著者撮影)

ヒトの体内に入る海藻は83%、では残りの17%はどこに行くのでしょうか?

正解は、家畜の飼料、作物の肥料、薬品、化粧品などの産業用です[11][12]

特に、海藻の飼料・肥料としての使用は、環境に優しいと注目を集めています

ヒトによる消費に話を戻しましょう。

海藻は持続可能なたんぱく質としてもスポットライトを浴びている

畜産業が環境破壊の一因として叩かれていることはご存知かもしれません。

でも増え続ける世界の人口を持続的に養うには、肉に代わるたんぱく質源が必要。

今までは主に大豆が肉に代わるたんぱく質源として使われてきましたが、

肥料・農薬、水資源、森林破壊、そして単一耕作による生物多様性の破壊などが課題です。

そこで登場するのが海藻。種類にもよりますが、乾燥重量の10~30%がたんぱく質です

さらに一度刈り取っても残った部分から再生するので、一年に何度も収穫できます[13]。

1ヘクタール当たり、一年間でのたんぱく質生産量は、大豆は0.6~1.2トンですが、海藻はなんと2.5~7.5トンです[14]。

日本に住んでいたころは毎日のように海藻を食べていたにもかかわらず、たんぱく質が豊富だったとは初耳でビックリしました。

【海藻の新たな可能性】電力から包装まで。そしてもちろん食品開発にも

海藻の新たな活用方法に関する研究も盛んになっています。

例えばバイオ燃料

深入りはしませんでしたが、ある種類の海藻の成分はエタノール生産にも向いているそうです[5]。

そして石油由来のプラスチックに代わる、「ビニール」袋や容器の原料としての活用。

既存品と同じように強く、しなやかで、透明性もある素材を作ることができます[15]。

スーパーの商品が海藻で包まれているという、不思議で素晴らしい時代が来るかもしれませんね。

(著者撮影)

まとめ、欧州での海藻の利用は?

いかがだったでしょうか。

欧州では、海藻を使った食べ物を流行させようと、企業が新商品を開発しています。

海藻入チョコ(www.delicatachocolade.nlより)

柚子と海藻の入ったチョコ[16]、海藻「ハンバーグ[17]」、海藻が練り込まれた「パスタ、パン、ベーコン[18]」、「タプナード[19]」...

海藻をそのまま食べることに慣れた日本人には、目新しい食べ方かもしれませんが、

もしも海藻を使って新商品を開発するとしたら、皆さんはどんなものをつくりますか?

海藻ベーコン(seamorefood.comより)

と書きながらも私は、

まずは海藻そのものの味と素晴らしさを世界の人々に知ってもらいたいです。

ご覧いただきありがとうございました。

水城の編集後記

オランダで生活していると、海藻バーガーや、お寿司の付け合せとして、お菓子の素材として、日本では見ない場面で、海藻をよく見ます。

農業でも、例えば牛の飼料に海藻を用いて、牛からのメタンガス排出量を減らす実験など、海藻の話題を聞きます。

また、代替タンパク質(植物性、昆虫!も含めて)やサステイナビリティ(持続可能性)は欧州ではとてもホットなテーマになっていて、海藻は解決策の1つとして注目されています。

日本人に馴染みの深い海藻の新たな一面が垣間見れたら幸いです。

森田さん素晴らしい記事をありがとうございました!


※以下参考文献(オンライン以外)

[4] Holdt S.L., M.D. Edwards (2014) Cost-effective IMTA: a comparison of the production efficiencies of mussels and seaweed J. Appl. Phycol., 26, pp. 933-945

[5] Pechsiri J.S., J.-.E. Thomas, E. Risén, M.S.Ribeiro, M. Malmström, G. Nylund, A.Jansson, U. Welander, H. Pavia, F. Gröndahl. (2016). Energy performance and greenhouse gas emissions of kelp cultivation for biogas and fertilizer recovery in Sweden Sci. Total Environ., 573, pp. 347-355

[8] Kajuna, G. (2004). TANZANIA’s ETOA A study to inform USAID/Tanzania’s 2005-2014 country strategic plan (CSP). 

[9] World Bank. (2015). Seaweed and Blast Fishing Ban Help Protect Tanzania’s Fisheries and Mariculture. 

[14] van Krimpen, M. and Bikker, P. (2017). Opportunities of seaweeds in animal production.

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