こんにちは!
オランダ農業トランスレーターとして、日本とオランダを農業でつなげることを生業にしているミズキです。
今回は、ぼくがコーディネーター&通訳としてお手伝いさせて頂いている世界一の農業大学、オランダのワーヘニンゲン大学での日本人向けプログラムの事例を紹介したいと思います。
研修事例としてご参考にして頂き、ぜひご興味ある方や企業様はご連絡頂ければ嬉しいです!
とても内容の詰まった研修ですが、できるだけ簡単にイメージを掴んでもられるようご紹介しますね。
それではいってみましょー♪
さくっと概要を知りたい方はこちらへ
テーマは「オランダの農業成功事例から学び、日本の今後の原動力に」
まず、今回ご紹介する事例は以前本ブログでもご紹介させて頂いた下記のプログラムです。
詳細は上記記事よりご覧頂ければと思いますが、このプログラムは「オランダの農業成功事例から学び、日本の今後の原動力に」がテーマ。
主に政策面や大きい枠組みのなかでのオランダ農業の成功の秘訣を探り、参加者(今回は大学と農協関係者様でした)の事業やプロジェクトに活かすという内容でした。
※上記記事では開催期間は実質計10日となっていますが、最終調整の段階で変更になり、合計7日間のプログラムとなりました。
ワーヘニンゲン大学での計7日のプログラム内容を時系列にご紹介
では、実際のプログラム内容を簡単に時系列でご紹介します。
そこで得た学びも少し書いていきます(ご参考になれば幸いです!)。
ご希望のテーマや内容により、自由にカスタマイズできる研修プログラムですが、プログラムイメージの参考になればと思います!
1日目:オランダ農業の歴史と発展、生産者組合の役割
参事官からのメッセージは、「オランダから学べることは沢山あるが、まずは日本がどういった方向に向かうベきか(ゴール設定)が重要」とのこと。
19世紀後半、小規模農家が多かったオランダは農家農業生産者組合を作ることで、工場や産業が発達した代わりに食を求めていたイギリスやドイツへの輸出戦略に成功した。
競争力を高めるため、市場への交渉力強化のために生産者が力を合わせ、小国オランダを農業輸出大国に。
現在はその競争力を保つために生産者組合はマーケティング、国際化、大規模化により注力している。
歴史や政策、色々な観点からオランダ農業は「団結」し、付加価値を高め、収益アップ、コスト削減、経営改善をしながら現在のの地位を築いたことがみえてくる。
また、ヨーロッパという単一市場ができたことや、グローバリゼーションが進む中で、「競争」が激化し、常に進化していくしかなかったということも分かる。
「競争と団結」
オランダの強さの理由の1つだと思います。
2日目:市場・生産者視察、サプライチェーンと日本での産学官連帯事例
午前中は実際の農家を視察。生産者から経営やビジネスモデルを詳しく聴取しました。
このように、座学だけでなく、外部視察もこのプログラムの重要な要素になってます。
午後からの講義はオランダのサプライチェーンと特徴(小売が強い、国際的)。そして現在のトレンド(レジリエンスとリスク管理思考)。
さらに、日本サプライチェーンとの比較や、オランダを参考にした日本での先進的な産学官連帯の取組を学びました。
実際の現場や事例から得ることが多く、とても濃い一日でした。
また、この日は金曜だったので、夜はオランダのパブで乾杯しましたー♪(^^)
3日目:オランダ&EUの農業政策と教育
※写真は昼食を食べていた大学にあるカフェです。
3日目はオランダとEUの農業政策と教育がテーマ。
農業政策は従来の農家優先の保護的な政策から、環境・動物福祉・農村部開発なども含めた包括的な内容にシフトしているとのこと。
また、教育面ではAKIS(Agricultural Knowledge and Innovation Systems :農業の知識とイノベーションシステム)の概念のもと、教育・研究・コンサル・生産者組合・政府などの各セクターが農業の知識とイノベーションの向上を図る機関をもち、お互いに連携し機能している。
皆で農業を支え、強くしようという考えと仕組みが今の強いオランダ農業をつくっています。
また、これまでの講義のふりかえりや、今後の日本に必要なビジネスモデルへの議論も行いました。
4日目:日本の農業政策、生産者視察(2タイプの種芋農家)
午前中は国際的な視点からみた日本の農業政策について。
農家所得における生産者支持(補助など)の割合が約5割の日本(国際価格との差を生む市場価格支持を含む)と、2割のEU(市場価格支持から農家への直接支払いに転換し、国際的に適正な市場にすると共に、農家も引き続き保護している)。
このように、日本の農家は世界的にも守られており、国際的な視点(OECD)では市場は歪んでいる(国際価格との差が大きい)といえるそう。
午後は種芋農家を2社視察。
サイズ(50と300ha)別の経営戦略(生産者組合⇔個人取引、質⇔量、国内⇔輸出)を実際の生産者から聞くことは非常に勉強になりました。
農地サイズが比較的小さければ品質で付加価値をつけ高く売り、生産者組合を通し、まとまって取引するのが合理的。
反対に、規模が大きいければ市場と直接取引でき、9割を輸出と、世界がマーケットになっています。
5日目:起業家精神の講義、都市型農業の視察
午前中はイノベーションを生む起業家の特徴について。
特に行動論に基づくエフェクチュエーション(実行)理論は面白く、自分なりの解釈は、行動しながら合理的にコミットし結果を生むこと。
まずはリスクをとり行動。自分のリソースから何できるかを考え、利益ではなく許容可能な損失を計算。協力者を上手く繋ぐなどして、悪条件やトラブルをどうチャンス変えていくか。
午後は都市型農業の講義と視察。
食料自給率の高いオランダでは、都市型農業は食の安全保障の目的ではなく、①生産者と消費者を繋ぐ(ショートサプライチェーン)、②都市開発における付加価値向上の2つを目的としている。
そして、視察はコーヒーかすを再利用してマッシュルームを作っている都市型農家。
自転車で行ける範囲のカフェからコーヒーかすをもらい、自転車で行ける範囲に育てたマッシュルームを販売。
培地として使用したコーヒーかすは栄養価も高くその後堆肥としても再利用される、サステイナブルな循環型農を行っていた。
都市型農業色々な可能性を感じる一日でした。
6日目:最新テクノロジーとビックデータ
6日目はテクノロジーについて。
社会的な技術トレンドにはじまり、温室栽培の最近理論、そしてオートメーションとロボットを表現型と精密農業の視点から学びました。
収穫ロボット(ブロッコリー、きゅうり、パプリカなど)、病害虫検知ロボット、ドローンの事例なども伺えた。
また、学内のロボット工学研究所では庭木剪定ロボット開発現場を視察。
イノベーションが起こっている現場を直接見れ、担当者から直接話を聞ける貴重な機会だった。
そして、IOTやビッグデータが起こす農食品業界のシフト。
オランダとEUの様々な関連プロジェクトからその連帯スキームや理論を知り、関連ビジネスモデルとその事例からも学びました。
色々なイノベーションと未来の農業の片鱗がみえ、ワクワクしたと同時にこの大きな流れに乗れる準備(勉強)をしたいと思いました!
夕食はワーヘニンゲン大学で修士課程を専攻されている日本人学生との交流会。
環境、途上国開発、畜産、栄養と様々な分野で志を持って学ばれていて、いい刺激を頂く。
カリキュラムの中身や、とても生き生きと楽しそうに学ばれている様子から同大学の素晴らしさが伝わってきました(^^)
最終日:プログラムのふりかえり、今後のプラン
最終日はレビューと今後のプランについて。
主にオランダ農業でなぜ産学官連帯が上手く機能したのかを変遷と共に再確認し、強さの根源である「連帯」を象徴する生産者組合の役割を深ぼりしました。
そして、日本が学ぶべき(改善すべき)点を収益構造・情報化・連帯・教育・サステイナビリティの5つに絞り、学んだ理論や事例を出し合いながらイノベーションを生み出すビジネスプランの方向性を確認。
輸出マーケティング戦略や日本版フードバレー構想の可能性や長期的な視点などもディスカッションしました。
最後はコース修了証書を授与され、学内のカフェで乾杯し終了でした!
ワーヘニンゲン大学、日本人向け7日間プログラムの感想
いかがでしたでしょうか。
7日間という短いプログラムでしたが、多角的な視点からオランダ農業の強さを学ぶ素晴らしいプログラムだったと思います。
毎日が濃く充実しており、あっという間の一週間でした。
オランダから日本の農業が学べること、知れば知るほど沢山あると感じています。
半日〜数日のプログラムなどもご希望に合わせてアレンジできます!
また、このような1週間ほどのプログラム以外にも半日〜数日の短期プログラムもアレンジ可能です。
下記ぼくがお手伝いさせて頂いたプログラムを2つ紹介します。
半日のプログラム事例:オランダ農業の今と成功の秘訣+試験場視察
2.5日のプログラム事例:品質管理(ポストハーベスト)と最新関連技術と研究
まとめ:「速く行きたいなら、一人で行きなさい。遠くへ行きたいなら、みんなで行きなさい。」
最後に、ぼくが好きなオランダを象徴している、ことわざを共有させて頂きます。
“If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”(速く行きたいなら、一人で行きなさい。遠くへ行きたいなら、みんなで行きなさい。)
ぜひ、ワーヘニンゲン大学のような世界的な農業大学で研修プログラムを受け、ともに学び、成長しませんか?
僕自身も同大学の施設園芸夏季コースを受講し、多くを学びました。
まずはお気軽にご連絡ください
大学のプログラム担当者とは密に連携しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせやプログラム作成の段階から通訳までトータルでお手伝いさせて頂きます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
皆様のご参考になれば幸いです。
オランダよりミズキでした。
※ワーヘニンゲン大学プログラム担当者の許可を得て掲載しております。