こんにちは。オランダのミズキです。
世界一の農業大学であるオランダのワーヘニンゲン大学で開催されていたAutonomous Greenhouse Challenge(温室自動栽培チャレンジ)の第二回の結果が出たので、ご報告します。
結果からお伝えすると、AI栽培がオランダトマト農家の2倍以上の収益を出しました!
以下に本プログラムの簡単な紹介とその結果をご紹介します。
www.wur.nlより
さくっと概要を知りたい方はこちらへ
AI(人工知能)を用いたトマト栽培の世界的なチャレンジ(コンペ)
Autonomous Greenhouse Challengeは、オランダのワーヘニンゲン大学および世界的なIT企業であるテンセント(中国)が共同開催。
コンセプトはその名の通り、AIを用いて温室栽培を行うコンペです。
去年に続いて今年が2回目の開催となります。
なお、去年は「きゅうり」で行われており、優勝はマイクロソフトのチームで、オランダ農家(参考値として同条件で栽培)よりもいい結果を出し、注目されました。
世界中の企業や大学などから参加を募り、一次審査を通過した5グループが最終選考で、6ヶ月間AIを用いて栽培を行うチャレンジです。
今年は世界中から約560グループの参加申込があったそうです。
www.wur.nlより
様々なセンサーとAIを用いた遠隔での自動トマト栽培
各グループにはワーヘニンゲン大学温室試験場で、96㎡のハイテク温室区画、各設備(天窓、2重スクリーン、ヒーティングシステム、HPSとLEDの補光、標準的なセンサー(温度、湿度、二酸化炭素濃度)や、各情報(日射量、潅水、排水、EC、培地温度と湿度)が共有されます。
そこに各チームが各自のセンサーを追加可能で、RGBカメラ、サーマルカメラ、様々な培地センサー、PARセンサー、日射計、茎径変化測定センサー、樹液流センサー、作物の重さを計るセンサーなど、追加していたそうです。
苗の定植は2019年12月16日で、収穫の最終日は2020年5月29日。
チャレンジ栽培区画の様子、www.wur.nlより
AIで栽培するというのがイメージしずらいかもですが、
温室内の環境設定(温度、湿度、二酸化炭素、光など)を、AIが各センサーから得た情報を元に、アルゴリズムやデープラーニングをもって適宜最適化することで、
実際の作業(収穫、誘引、葉かき、芽かきなど)は人が行うのですが、そのタイミングや各指示をだすそうです。すごいですね。
www.tudelft.nlより
また、比較の参考値としてオランダのトマト農家のグループが同条件で栽培しています(オランダのトマト農家は世界的にも高い技術で有名です)。
AIトマト栽培の評価は、収益性(50%)、サステイナビリティ(30%)、AI戦略(20%)
各グループの成績は、収益性、サステイナビリティ(持続可能性)、AI戦略で評価され、各50%、30%、20%のウエイトがつけられています。
収益性では、収量及び品質(Brix、同土)から市場での売上を想定し、それ各コストが引いた利益で評価されます。
サステイナビリティーは、コストにも関連しますが、いかに資源(熱、電気、二酸化炭素、水、液肥)を削減したかで、評価されるそう。
少ないインプット(資源)で高いアウトプット(収量)は、オランダ施設園芸の強みであり、今後ますます重要になるサステイナビリティーにも直結します。
AI戦略では、審査員が、AI戦略の自立(自動化)性、イノベーション、ロバスト性、スケーラビリティで評価しています。
審査員(左より):Marco Bressan, Gerrit van Straten, Leo Marcelis, Dijun Luo and Erik Vereijken、www.wur.nlより
優勝はオランダチームで、トマト農家の2倍以上の収益を叩き出した!
優勝チームは「Automatoes」という、オランダ企業、農業大学、工科大学の社員、研究者、学生で構成されたチームでした。
優勝したチームAutomatoes、www.wur.nlより
以下は収益性の結果です。
チームAutomatoesは、㎡当たり6.86ユーロの収益を出し、参考値(Reference、オランダ農家)の3.10ユーロの2倍以上の結果でした。
www.wur.nlより
また、下記は、各資源(熱、電気、二酸化炭素、水、肥料)の、トマト1キロ当たりの使用量です。
www.wur.nlより
優勝チームは、二酸化炭素以外は、オランダのトマト農家と比較して、使用量が抑えられて(=最適化されて)います。
AI栽培や各センサーによって資源が無駄なく使用でき、収益も伸ばせることが証明された結果になったかと思います!
WUR大学の温室試験場、www.wur.nlより
※オランダ農家チームは、コロナの影響により後半はオンラインでのコミュニケーションがメインになったそうで。その影響も結果に反映されているかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
前回のAIによるきゅうり栽培でも、現役農家に優った結果で驚きましたが、トマトでも同じ結果となり驚きました。しかも2倍以上の収益性です。
もちろん、一般的に使われるようになるにはある程度時間がかかるかと思いますし、設備コストなどは上がると思いますが、農業におけるテクノロジーの可能性にもワクワクします。
私がよく視察する世界的な農業コンサルティング企業であるデルフィー社でもAI開発は進められており、「未来の農業」として力を入れています。
農業×テクノロジーは今後も注目していきたいと思います。
ご覧頂きありがとうございました。
※Autonomous Greenhouse Challengeのワーヘニンゲン大学ニュース